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幽霊西へ行く(日语原文)-第19章

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 ――叔父《おじ》さんは、インチキをやっている。自分の腹をこやすことだけ考えて……
 ――馬鹿《ばか》! お前にはまだ、事業家としての資格がないのだ。この恩知らず!
 などいうやりとりがあった後で、つかみあいの喧嘩《けんか》になるところを、信也にひきわけられたということだった。事実、泰二は兄弟のため、事業のためばかり思っているのではないような聞きこみもあったのだ……。
 しかし、信也以外の三人と、牧野健とを結びつける糸は何一つ発見できなかった。三人とも大阪へ旅行したことはあるが、そこのチンピラと何かの接触《せつしよく》があったということはたしかめきれないし、まして殺人を起こすだけの動機があろうとは思えなかった。
 牧野健が大阪で傷つけた相手というのも素人《しろうと》で、やくざと摺钉沥筏盲啤⒄l《だれ》かが枺─蓼菑妥墶钉栅筏妞Α筏摔浃盲评搐郡趣馑激à胜ぁ
 さすがの加瀬警部もすっかり途方《とほう》にくれてしまった。

    5

「坊主《ぼうず》、また写真か?」
 夜おそく、家へ帰って来た警部は、ネガやポジを整理している息子《むすこ》の浩一《こういち》に声をかけた。
「うん、この前の日曜に撮《と》って来たやつ」
「どれどれ」
 警部はポジをのぞきこんだ。
「なんだ。これは頭が切れてるじゃないか」
「僕《ぼく》のせいじゃないよ。カメラにパララックスの匡正装置《きようせいそうち》がついてないんだもの」
「パララックス!」
 警部の頭に何かが電光のようにかすめた。パララックスといえば、近接|撮影《さつえい》のとき、レンズとファインダ伍gにおきる視野の铡瞑D―それが一つの鋭《するど》いヒントとなったのだ。
「ねえ、一眼レフだと、こんなことにならないんだよ。新しいカメラ買ってくれない?」
「一眼レフというと高いんだろう」
「アイレス?ペンタなら安いよ。それに性能もいいし、僕《ぼく》が本職のカメラマンになるまで、いやなってからもつかえるよ」
「よしよし、月賦《げつぷ》で買ってやろう。一つ、事件が解決した記念にな。しっかり勉強してりっぱなカメラマンになるんだぞ」
――この殺人の犯人を見やぶった警部は、やっと父親らしい気持ちにもどっていたのだった。


  死人は筆を選ぶ――犯人当て小説 その二――

    1

「横山君、遅《おそ》くまでご苦労だったね。帰りにどこかで一杯《いつぱい》やろうか」
 加瀬警部と横山部長|刑事《けいじ》が、ある事件の取り眨伽蚪Kわって、検察庁へ送る眨麜蜃鳏杲Kわった時には、もう九時すぎになっていた。
「どうもありがとうございます。でも、このぐらいではなかなか音《ね》をあげておられませんよ。第一、捜査《そうさ》課長からして残業じゃありませんか」
 横山部長は、いかにもエネルギ瑴氦沥ⅳ栅欷皮い毪瑜Δ示尢濉钉瑜郡ぁ筏颏妞工盲菩Δ盲俊
 電話が鳴った。噂《うわさ》をすればなんとやら内線の中島|捜一《そういち》課長からだった。
「加瀬君、仕事はすんだかね?」
「はあ、ただいま終了《しゆうりよう》いたしました」
「そうか。それでは疲《つか》れているところご苦労さんだが、もう一仕事やってくれんか」
「事件は?」
「殺しだ。松尾|恒弘《つねひろ》――千代田大学の英文学教授がやられたのだ。住所は|雑司ケ谷《ぞうしがや》二の四四二、墓地《ぼち》のすぐそばの家だがね」
 加瀬警部はごくりと生唾《なまつば》をのみこんだ。このごろは大学の数もめちゃくちゃにふえているから、私立大学の教授といっても、一々名前もおぼえてはいられないが、松尾恒弘という人物は、翻訳家《ほんやくか》なり評論家としての方がかえって有名な存在なのだ。加瀬警部もつい二、三日前、雑誌でその名前を眼《め》にしたばかりだった。
「はい、わかりました。すぐまいります」
 加瀬警部は電話機をおいて、
「横山君、酒はこの次にしてもらうよ」
「事件ですね?」
 横山部長は机の上のメモをのぞきこんで、
「縁起《えんぎ》の悪い番地ですね。シニンが二人頭をあわせてならんでいる」
 と眉《まゆ》をひそめた。

    2

 松尾|恒弘《つねひろ》の邸宅《ていたく》は、戦争前の建築らしい。いかにも古風で堂々とした洋館だが、気のせいか、警部は中に一歩ふみこんだとたんに、胸をしめつけられるような息苦しさを感じた。
 現場は奥《おく》の洋間だった。十六|畳《じよう》ぐらいの大きさで、壁《かべ》は大半が書棚《しよだな》になっており、一隅《いちぐう》にはデスク、その反対側の隅《すみ》には、応接用のセットがおいてある。
 松尾恒弘は、和服のまま、回転|椅子《いす》にすわり、デスクにうつぶせになって死んでいた。警部がちょっと横顔をのぞきこんだ感じでは五十五、六と思われた。
「妙《みよう》だな」
 部屋《へや》を見まわして警部はつぶやいた。回転椅子や、その下の絨毯《じゆうたん》がべっとり血にそまっているのは当然として、その血の糸は、ずっと応接セットのほうまで続いている。
「やられたのはむこうですね。犯人は被害者《ひがいしや》とすわって話をしている間に、突然|凶器《きようき》で先生を刺《さ》し、死んだと思って逃《に》げ出したのですね。しかし、先生は完全に死んではいなかった。最後の死力をふりしぼって、ここまではって来ると、なんとか体を椅子までひきずりあげ、ここへすわって息をひきとったのですね」
 横山部長は、警部の心中を見すかしたようにいった。
「うむ、鋭《するど》い短刀かペンナイフのようなもので、心臓近くを一突《ひとつ》きにやられたのだな」
「凶器《きようき》はまだ発見されませんが、犯人はこれを楯《たて》のようにして、自分の体に返り血のつくのをさけようとしたと思われます」
 床《ゆか》の上におちていたクッションを指さして目白署の刑事《けいじ》がいった。傷口は左乳の近く、そこを前からやられている。たしかに、常習犯でもないかぎり、これだけの傷をおわせたなら、相手は即死《そくし》したと思うだろう。
「なるほど、それで問睿稀ⅳ胜急缓φ摺钉窑い筏洹筏⑺懒Δ颏膜筏啤ⅳ长长蓼扦悉盲评搐郡趣いΔ长趣坤
 警部はいま一度、死体を見つめた。顔の下にはメモ用紙らしい紙片がのぞいている。その上には「二」という字が一字書きのこされ、その末端《まつたん》で右手の万年筆がとまっていた。
「妙《みよう》だ……」
「何がです?」
 横山部長も今度は警部の真意を読みとれなかったらしい。首をかしげてたずねた。
「なぜ、先生がいまわのきわに、この万年筆を使ったかということだよ。わざわざこれを選んでキャップをぬいたらしいが」
 たしかに、死体の左手は、金色のキャップを握《にぎ》りしめている。それなのに、デスクの上のペン皿《ざら》には、鉛筆《えんぴつ》もあれば、すぐ書けるようになっている万年筆も二、三本のっているのだ。
「そういえばたしかに妙《みよう》ですね。握っているのはたしかにプラチナ?オネスト六〇――机の上のはパ‘にシェファ衰猊螗芝楗螭扦工俊ˉ雪‘カ悉工皶堡胩鍎荬摔胜盲皮い毪韦恕ⅳ胜脊b品を、わざわざキャップをぬいてつかったんでしょう」
「わからんな。これはたしかに、インキ壜《つぼ》がいらないというキャッチフレ氦菈婴瓿訾筏皮い胪蚰旯Pのはずだが、そういう性能はともかくとして、死ぬことを覚悟《かくご》した人間が、最後にこの一本にこだわったということには、何かの意味がありそうだね……」

    3

 鑑識《かんしき》の眨伽Kわると、加瀬警部は机の上のペン皿を克明《こくめい》に眨伽埔姢郡⒁苫蟆钉铯筏仙瞍蓼胍环饯坤盲俊6兢违雪‘カ摔稀ⅳ沥悚螭惹啶瘸啶违ぅ螗い盲绚い巳毪盲皮い搿%伐Д榨々‘もモンブランもその通り、鉛筆もちゃんと削《けず》ってあって、ちょっとした書き物には何の不自由もなかったはず――松尾恒弘が最期の瞬間《しゆんかん》に、この特定の万年筆に執念《しゆうねん》を燃やした理由はどうしてもわからなかったのである。警部はいちおう、この疑問をタナあげにして、次の段階の眨伽艘皮盲俊
 学者の家庭というものは、その妻がよほどしっかりしていないかぎり、どうしても非人間的に冷たくなって来るものだが、この家も例外ではなかったらしい。
 まず、恒弘の妻の牧子は、後妻で三十二|歳《さい》の女ざかり、見るからに虚栄心《きよえいしん》の強そうな、どこか険《けん》のある美人だが、聞きこみによると、大学教授夫人という見栄にかられて結婚《けつこん》したものの、性格的にしっくりしないところがあるのか、夫の学問を理解しようとつとめるどころではなく、家族の生活に無干渉《むかんしよう》な夫の性格をいいことに、ひたすら家を明けて撸Г託iいているらしい。
 恒弘と牧子の間には子供がなく、先妻の残した子供に、省一郎、慶二郎、節子の三人がいるが、省一郎はアメリカ文学研究のために現在ハ些‘ド大学に留学中だというのだから、この事件とは全然無関係と見るほかはない。
 次男の慶二郎は、一家の中ではたしかに不肖《ふしよう》の息子《むすこ》らしい。父や秀才の兄に対しては、たえず劣等感《れつとうかん》を抱《いだ》いていたらしいが、大学の入学試験に何度も失敗をかさねたのがきっかけで、すっかりぐれてしまい、家をとび出してしまったというのだ。二年前、家出の当時には、自殺でもしたのではないかとあわてて、家でも捜索願《そうさくねが》いを出したらしいが、三か月後にはひょっこり帰って来た。しかし、その間、どこで何をしていたかということについては、口をつぐんで語らなかったというのである。今では、この家の近くにアパ趣蚪瑜辘谱·螭扦い毪⒑韦颏筏皮い毪悉铯椁胜ぁ<窑丐瑜辘膜韦稀⒔黏颏护婴辘死搐霑rだけ、しかもそのたびに、
「金をくれないなら、親父《おやじ》に恥《はじ》をかかせてやる。大学教授の息子が、強盗《ごうとう》をやったら、新聞は大喜びで書きたてるだろうよ」
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