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幽霊西へ行く(日语原文)-第36章

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しましたが、ハンカチにくるんだ凶器《きようき》のナイフが見つかりました。被害者《ひがいしや》の血と犯人の汗《あせ》と、それから髪《かみ》の毛が一本……科学|鑑識《かんしき》のおかげで……」
 泰二はそこでがくりと首をたれた。
(解答数一万三千八百九十六通中、正解は九千九十通)


  その二――「死人は筆を選ぶ」の解決

 その翌日の午後、加瀬警部は松尾牧子を警視庁へ呼び出した。
「奥《おく》さん、先生を殺したのは、助手の木下正直でした。彼は一切を告白しました。私は、先生が最後までプラチナ万年筆に執着《しゆうちやく》しておられたところから、犯人の正体を見やぶったのです」
 牧子の顔は能面《のうめん》のようにこわばっていたが、警部はさらにきびしい表情で、
「先生は英文学者ですから、研究室では、みんなを英語のあだ名で呼ぶ習慣があったようですね。たとえば井沼波子さんはミス?リップル。木下正直はミスタ骏庭攻权D―この意味は説明しなくてもおわかりでしょう」
「…………」
「最後のメモに残っている『二』という字もかたかなの『キ』の書きかけだったのです。キノシタ――と書きはじめたところで、先生は力つきて絶命されたのです」
 牧子の顔には、全然血の気がなかった。
「もちろん、法律的には、あなたはこの事件とは無関係です。ただ、彼を、一人の有為《ゆうい》な青年を、殺人の大罪へ追いやったのは、あなたにも全然罪がないとはいい切れないのです」
「わたくしが、何を……」
「彼は一切を告白しました。ことごとに反目している節子さんへのいやがらせか、ほんのつまみ食いのつもりか、あなたは彼とよろめいた。彼は誘惑《ゆうわく》に負け、身の破滅《はめつ》をまねきました。先生にこの関係がばれた時、彼は学者としての将来も、恋人《こいびと》も失う羽目におちいったのです。彼は涙《なみだ》ながらに、先生に許しを乞《こ》いに行ったが、聞いて下さらなかったので、半|狂乱《きようらん》になって刺《さ》した――といっています。火撸Г婴稀ⅳ郡趣ē蕙氓烈槐兢韦膜猡辘扦狻ⅳ趣螭来蠡黏摔胜毪长趣ⅳ毪猡韦扦工琛
(解答数一万一千七百八十一通中、正解は二千三百六十七通)


  その三――「時計はウソ発見機」の解決

「わかりませんな……あのウォルサムが、あの時計がウソ発見機の役割を果たしたというのはどういう意味ですか?」
 横山部長刑事が頭をかいてたずねると、加瀬警部はデスクの上に身をのり出して、
「いいかね、君はあの時計をとりあげて、何気なく竜頭《りゆうず》をまわし、ほとんどいっぱいにねじがまいてあるといったろう……それはどういうことを意味するかね?」
「どうって――ああ、わかりかけて来ました。ねじをまいて、まだ間がなかったということになりますね」
「そうだろう。だからもし松崎武則がいうように、十時か十時半ごろ、大賀耕治が寝《ね》こんでしまっていたら、寝る直前に時計のねじを巻いたとしても、ゼンマイはもっとゆるんでいたんじゃないか。つまり、被害者《ひがいしや》は明け方四時ごろ、殺される直前ぐらいに、時計のねじをまいたということになるんじゃないか」
「それでは一度目をさまして?」
「そういうことはあるまいな。たいていの人間は、寝る前に時計のねじをまく。自動巻きでないかぎりはね……おそらく彼は、神戸の本社からの報告になやまされて、なかなか寝つけなかったんじゃないのかな」
「なるほど、そう考えると、松崎武則はウソをついていた――つまり犯人ということになりますか。でも、彼はなぜ、そういう無意味なウソをついて自分の墓穴を掘《ほ》ったのでしょう」
「犯人の心理というのはそんなものだよ。自分が殺しを計画している晩、ねらいをつけた相手がなかなか寝ようとしない。彼は自分でも部屋《へや》の電灯が消えるのをいらいらしながら待っていたのだ……自分の犯行をかくすために、思わず逆のことをしゃべる心理はわかるだろう?」
「わかります。でも、殺人の動機は?」
「彼は古い型の相場師だ。最近の経済の感覚にあわなくて、大穴をあけたんじゃないのかな? それを自分の失敗とすなおにうけとらず、もう少し資金が自由になれば成功できると思いこみ、一つにはその失敗をかくすため、一つには奥さんを口説《くど》いて次の勝負をはじめるために、殺意をおこしたんじゃないのかな。まあこの推理はおそらく当たらずといえども遠からずというところだろうよ」
(解答数九千三百二十三通中、正解は千四百七十二通)


  その四――「苦労性な犯人」の解決

「殺し方が、ひどく念入りなものだから、苦労性な犯人だといって笑ったが、犯人のこの性格は、やはり事件の全体に反映しているようだね」
 加瀬警部は、タバコに火をつけながら、横山|刑事《けいじ》に説明をはじめた。
「殺しの手口から見て、豊治は除外できるだろう。ああいう連中は、こんな念入りなまねはしない。にせ電話の細工などしそうもないし、セ毳梗骏蕙螭蚝簸映訾贡匾猡胜ぁ
「警部|殿《どの》、問睿悉饯长扦工琛I狡椁丐盲皮侩娫挙⒈镜堡摔护悉伽膜趣筏啤ⅳ胜肌ⅴ哗‘ルス?マンのほうを?」
「まあ、待て。順を追って説明するよ。被害者《ひがいしや》は、ミシンかけの最中に殺されたという点を考えると、山崎実は犯人とは考えられないな。女というものは、愛情の冷えた夫より、惚《ほ》れている恋人《こいびと》のほうに、ずっと女らしくなるものだよ。せっかく、男がやって来たのに、ミシンをかけながら、話をするような、世帯じみたまねは考えられん」
「なるほど、それでは犯人は亭主《ていしゆ》……」
「早まっちゃいけない。そこでいよいよ問睿蔚悚坤ⅳ长畏溉摔问挚冥橐姢啤⑸狡椁丐盲皮郡韦狻ⅳ摔浑娫挙扦悉胜い韦省¥饯Δ胜毪取⒈摔蠑M似犯人として呼び出されたことになるが、矢島道夫は、ぜんぜんべつの理由でよび出された。犯人は、彼といっしょに、もう一度、現場へはいりたかったのだ」
「現場へはいる? 何のためです……」
「それが、犯人の苦労性なところなのさ。自分が犯罪の現場へはいったということが、自分にはわからない何かの科学検査で証明されてはまずいと心配したのだね。たとえ、そういう場合でも、自分が発見者として、現場へふみこんでいたら、その点は何とか弁解できるじゃないか」
「では犯人は木浦綾子……」
「そうだ。ライタ虻痢钉踏埂筏鄼C会もあった。関係者も全部知っていた。女同士のことだから、被害者《ひがいしや》もミシンをふみながら、気がるに応待していたか、それともミシンのかけ方で、何かわからないところがあるといって、教えてもらおうとしたのか。それに……」
「それに何です?」
「女のハンドバッグは、恰好《かつこう》の凶器《きようき》入れだよ。それから、笠井|晃《あきら》が犯人を察していたとしても、僕《ぼく》はちっともおどろかないね」
(解答数八千七百十三通中、正解は三千九百六十二通)


  その五――「自動車収集|狂《きよう》」の解決

「わかりませんね……当日の天候は、誰《だれ》に対しても平等だったでしょうし、あのダスタ骏畅‘トの持ち主はわかりませんし、例の肘《ひじ》のところについていた泥《どろ》のはねが、何か重大な手がかりになるというのですか」
 横山部長刑事は、まだ首をひねっていた。
「そこだよ。横山君、返り血の点から判断しただけでも、あのコ趣溉摔韦猡韦坤趣いΔ长趣祥g摺钉蓼沥筏い胜い坤恧Δⅳ饯违畅‘トの肘の部分にだけ、泥がはね上がっているというのは、犯人が車に仱盲皮い郡郡幛坤趣辖忉嫟扦胜い汀
 加瀬警部は、ゆっくりタバコに火をつけながらいった。
「しかし、車に仱盲皮い郡胜椤ⅳ嗓Δ筏浦狻钉窑浮筏摔悉亭ⅳ谩ⅳ铯辘蓼筏俊J录蔚币工稀⒄洹钉幛氦椤筏筏い椁い闻丹扦筏郡椤④嚖畏櫎_いていたから……」
「その通りだ。雨上がりの道路で、車を哕灓筏皮い郡椤⒑韦闻淖印钉窑瑜Δ贰筏恰⒛唷钉嗓怼筏颏ⅳ婴毪长趣悉饯螭胜苏浃筏胜い琛g際、哕炇证扦狻⒎櫎铯酥猡颏堡啤④嚖蜃撙椁护皮い毪韦趣嗓い毪坤恧Α
「ただ、それにしても、車を持っているのは三人で、その中の収集|狂《きよう》は一人だけ、金子進ですから、彼が犯人だということに……」
「いや、摺钉沥筏Α:嵘骄⒛啶韦悉亭膜い郡韦稀⒂窑坤盲郡汀⒆螭坤盲郡汀
「左でした……ああ、そうでしたか。どうしてそんな、かんたんなことに!」
 横山刑事は、やっとそこに気がついたらしく、歯ぎしりしていた。
「君もやはりそういいたくなるだろう。国産車の哕炏稀⑦M行方向にむかって右についているけれども、アメリカはじめ、大部分の外車の哕炏稀⒆髠趣摔膜い皮い毪汀¥坤椤⒆笾猡摔坤蹦啶膜い皮い郡趣いΔ长趣稀⑼廛嚖蜻転していた証拠《しようこ》になるんじゃないか。田原修治の車は国産車のスバル、金子進は国産ポンコツ、外車のフォ嗓蜻転していたのは偅x道――彼が吉岡茂殺しの犯人なんだ」
「それでは、彼がスバルの模型を盗《ぬす》んだのはなぜだったのでしょう?」
「もちろん、嫌疑《けんぎ》を三人の収集|狂《きよう》のほうへ向けるためだったろうね。考えてみれば、本当の収集狂なら、証拠《しようこ》になるようなあの模型を現場へほうり出しておくわけはないじゃないか。大きさからいっても、かくしきれないものじゃないしね……犯行の動機は、君のいうコンプレックス説で十分じゃないのかな」
(解答数六千四百五十一通中、正解は三千七百九十通)




角川文庫『幽霊西へ行く』昭和61年11月10日初版発行
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